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​7日目「ナバホの聖地」  アメリカ南西部 3475 マイル ロードトリップ の記し~

アラームの鳴る前、フライシートをポツポツ叩く音に起こしてもらう。

チャコキャニオンは年間降水量200ミリと聞いていたので、この希少な朝に感謝しよう。テントから出てみると、薄い雨雲はこの谷の上だけで東の空は赤く焼けていた。

古代プエブロ族の中心地だった1000年前にも、こんな気持ちのいい朝があったんだろうな。

濡れたフライシートを乾かしている間に簡単な朝飯を。

ここまで淹れる余裕のなかったマツムシコーヒーのケニア。ようやく封が切れた。となりのT氏の分も落とす。

店主兼友人の彼にインディアンと飲むかもしれないよと伝えたら これを煎ってくれた。深い意味は無さそうだけど。

チャコカルチャーのキャンプ場。


遺跡の目の前の25番サイトにて

​5日目の16枚切り食パン、葉っぱとトマト、そしてゆで卵。バランスまずまず。

国立公園などのキャンプ泊の申請について。

アメリカは自然や文化遺産に触れるためのプログラムが感心するほど整備されている。

例えばいくつもある連邦機関の許可申請や宿泊予約などは「Recreation.gov」が一括窓口となっている。

グランドキャニオンなどの国立公園内キャンプグランドを予約するならこのサイトから。

国立公園内やその周辺の宿泊施設は予約が取りにくかったり、高額だったりするが、キャンプグランドならハイシーズンでも予約が取れる可能性が高い。

昨晩は到着が遅かったので、チェックイン的な手続きを何もしていない。

とりあえずビジターセンターに行って、予約したサイト#25に昨晩テントを張ったこと、すでに撤収済みであることを事後報告した。

報告だけのつもりだったが、親切で熱心な若いパークレンジャー(パークガイド)はすべてのトレイルルートの所要時間や見どころを説明してくれた。

半分も理解できなかったが、あなたの溢れるパーク愛はちゃんと感じ取れたよ。

お陰で4つのトレイルガイド冊子($1.00-2.99)と2つの遺跡ガイド($1.00)を勢いで買ったからね。

ところでアメリカの各国立公園には、同じフォームの無料パンフレット(ブローシュア)がある。エントランスゲートで貰えることが多いが、ビジターセンターにも置いてあるはずだ。

これまでに訪れたアメリカ国立公園のパンフレットは大切に保管しているが、ここ、チャコカルチャーの表紙画はちょっと違う。1000年前のプエブロ・ボニートの全景イラストに、当時暮らしている人々も描かれている。

見ていると、なんだかグッとくる画。大事にしようと思う。

チャコカルチャーのガイドブック


パークに入ったら、まずビジターセンターに寄って情報収集。

こういったガイドマップや、リアルタイムの情報は下調べでは出てこない。

まずはプエブロ・ボニートに行ってみよう。

*別ウインドウで GoogleEarth を開く

プエブロはスペイン語で村とか集落という意味、ボニートは美しい。

チャコ・キャニオン遺跡群の中心的集落で、使用期間も西暦850~1150年頃の約300年間といちばん長い。

形状は直径150mほどの大きな半円形で、すぐ後ろの崖の上からでないとその美しい全景は見ることができない。

パークレンジャーの話では崖の上のビューポイント(Bonito Overlook)までトレイルヘッドから往復2マイル、所要時間1.5Hということだった。写真を撮りながらだと2時間以上。この後の予定を考えると無理だな。

T氏との待ち合せは1時間後。プエブロボニートの前に、となりの遺跡チェトロ・ケトルまで歩いてみようか。

ペトログリフを見つけられるトレイルになっているらしい。

プエブロ・ボニート


プエブロ・ボニートへの導入口。集落の一部は崩れた崖に潰されている。

チャコキャニオンのペトログリフトレイル


崖沿いに800mほど続くペトログリフトレイル。

チャコキャニオンのペトログリフ


1000年前によじ登って描いたのはどんなヤツだろう。

チャコキャニオンのペトログリフ

 

どんなヤツだろう。

チェトロ・ケトル

 

チェトロ・ケトル。$1のガイドブックによれば、使用期間は西暦1000~1100年頃の約100年間。

チャコキャニオンの小さなキヴァ

 

いまは誰もいない

チェトロ・ケトルのグレート・キヴァ

 

チェトロ・ケトルにあるグレート・キヴァ。

キヴァでは宗教儀式が行われたと言われているが、その中で最大級のもの。

チェトロ・ケトルのグレート・キヴァ

 

グレート・キヴァは24mmの画角にまったく収まらない。

プエブロ・ボニート

 

戻る途中に見るプエブロ・ボニート全景。彼らがこの谷に定着した必然みたいなものを感じている。

プエブロ・ボニート


プエブロ・ボニート遺跡の北東部を覆う崩落跡。ペトログリフトレイルより。

プエブロ・ボニート


迫力のある遺跡の南東部

 

老兵、マコーミック

プエブロ・ボニートの角


シャープな南西部

プエブロ・ボニート


状態の良い北の壁、4~5階建てだったという。

プエブロ・ボニート


崩落跡の見晴らし台からは部屋の一部といくつかのキヴァが見える。

集落全体を望むなら、やはり崖の上のビューポイントまで行く必要がある。

今度の旅の計画でいちばん誤ったのは、ここチャコカルチャーだと思う。少なくとも丸一日は必要だった。

必ず、また来ますよ。

さて、実は今日もあまり時間がない。

ここを出た後、とんでもない奇岩を拝みに行くのだ。

アメリカレンタカー旅の師匠に教えてもらった、その名も「キング・オブ・ウイングス」

チャコカルチャーからは直線距離で約10マイル。道のりで20マイルぐらいか。

師匠とはルートが違うが、グーグルマップでチャコカルチャーからの進入路を調べておいた。全区間未舗装だが何とかなるだろう。

デコボコダートも日中はまずまず走りやすい。時速35マイルでロード7950を北上している。

この先のヘアピンコーナーからロード7980への連絡道に入ればいい。

 

しかし、その連絡道に着いて言葉を失う。

グーグルアースでもその深い 轍(わだち) は確認していたが・・・。

腹下を擦るほどの悪路。さらに道幅が狭い。ミニバンのシエナではとてもじゃないが進めない。

轍が隠れるほど草も茂っているし、この道はほとんど使われていないな。

 

大きく回り込めばたどり着けるが午後の予定もある。

旅の直前、神田の居酒屋で「あそこに行くの?お願いだからガーミン持っていって」とわざわざ送ってくれた師匠には申し訳ないが、今回「キング・オブ・ウイングス」はここでキッパリ諦めることにする。

 

 

昨晩、恐る恐る走ってきたダートを時速45マイルまでペースアップし、US550に戻ってきた。

予定ではこの後NM371(ニューメキシコ州道371号線)を北上し、このエリアでは最大の街ファーミントンでランチや買い出しをするつもりだが、少しぐらいルートが変わっても目的地に着ければ問題ない。

ファーミントンで補給を終え、いま走っているのは US491N(国道491号線北ルート)。街の名にもなっているシップロックを遠くに眺めつつ、US64から北上してきた。

間もなくコロラドとの州境。5日間どっぷり浸かったニューメキシコともいよいよお別れだ。超孤独で天の川を見ていたホワイトサンズが、もう何カ月も前に思える。

このまま行けばメサ・ヴェルデ国立公園にも寄れるが、タオス・プエブロやサンタ・フェ、チャコカルチャーをいつの日かのんびり周る、プエブロプランのお楽しみに取っておこう。

今回はUS160を西へ。

フォーコーナーズの手前でCO41(コロラド州道41号線)に進路変更。この道は州境を越えればそのままUT162(ユタ州道162号線)になる。

US162 給水塔のある風景


UT162, Aneth, UT

何度かグランドサークルを周った人の多くは US89やUS191、I-40や旧ルート66など、道をベースにした距離感覚や、気候、標高などの肌情報を脳内地図に描いていると思う。

その地図に、出会った人や個人的情景など、主観情報を書き足しているんじゃないかな。

自分もそうなんだけど、もうひとつ「川」という要素を持っている。

例えば、乾燥したこのサン・ホアン盆地にも同じ名前のサン・ホアン川があって、ナバホ・レイクから、いま通り過ぎたユタ州のアネスという小さい街まで流れが続いている。ファーミントンも含め、途中にあった街は大体この川のほとりだ。

この後、サン・ホアン川はブラフ、メキシカンハットを潤しながら、グースネックを更に削りレイクパウエルでいよいよコロラド川に合流する。

そのコロラド川は200km上流でグリーンリバーと一緒に「Island in the Sky」を造った。

何年か前「Island in the Sky」の先端で、昇ってくる満月と月光に照らされた眼下の大渓谷を、時間を忘れ見ていたことがある。

地平線まで360度どこを見ても人工物や人工の光が無い、誰もいないなんて初めての経験だったから、その時は恐怖感よりも特別な感情がどんどん湧いてきた。妙な言い方だけど、リアル没入感とでも言おうか。

この数時間の記憶は、脳内地図を作る上でとても強い情報となっている。

 

 

コロラド川はその後、あのグランドキャニオンを 今なお削り続け、レイク・ミードを経て 初日に通ったカリフォルニアとアリゾナの州越え地点まで続いている。

自分の脳内に描くグランドサークルには、やはり「川」が大きな要素だ。

ハンドルをT氏にお任せし、↑の様なことを考えながら車窓を眺めていたら、ブラフまであっという間だった。

ぶつかった丁字路はUS191。インターステート40号線と70号線の区間は通ったことがあるが、このラインは化石の森からアーチーズまで、グランドサークル縦の花道だ。

今回はここからもう1本の本流、グランドキャニオン方面へ続くUS163に乗り換え、タイトル通りナバホ族の聖地へ向かう。

ズニ族のジュエリーショップにあるビンテージカー


Grandpa Fargo, US191×UT162, Bluff, UT

​サン・ホアン川のほとりにある ズニ族のクラフトジュエリーショップ の木陰が ファーゴじいさんの居場所

メキシカンハットでサン・ホワン川を越えれば、そこはナバホの国。ナバホの法律があり、ナバホの警察がある。

​飲酒は違法なので、川を越えた先にアルコールを売る店は無い。

ユタ州、メキシカンハットの写真。


US163, Mexican Hat, UT

川を越える少し前、左手に街の名の由来が見えてくる。

US163 メキシカンハット


ソンブレロのような奇岩、メキシカンハットロック。

ラジエータースプリングスにあるダートコースのモデルだ。

川を越えナバホ国に入国した。

入国と言ってもパスポートは要らない。各々で入国を実感すればいい。​人によっては肌で分かるそうだ。

実際はニューメキシコ州シップロックもナバホ・ネイションに入っていますが、すぐ出てしまったりしてあまり実感がないので、この川の国境線を越えたタイミングで入国としています。

US163 フォレストガンプポイント


US163, Forrest Gump Point, UT(Navajo Nation)

ここはアメリカであってアメリカではない。この写真から伝わるだろうか。

モニュメントバレーには陽のあるうちに到着できた。

奥の院 キャニオン・デ・シェイと、ここがナバホ族のふたつの聖地と言われている。

​国定公園になっているキャニオン・デ・シェイと違い、ここはナバホ族の公園なので、アメリカの公園パスは使えない。

2020年4月の時点で入場料は車1台20ドル(最大4人分の入場料含む)となっています。2017年10月はひとり5ドルだったと記憶しているので、価格が見直されたようです。

夕暮れのモニュメントバレー

ところで今日の宿は、あのTHE VIEWだ。Hotel じゃなくて CampGround だけど。受付を済ませ、日が暮れる前に設営しよう。

振り向けばミッチェル・ビュートの向こうに仕事終わりの太陽が帰っていくところだった。

モニュメントバレー、夕暮れのMitchell Butte

今日は時間がありそうだ。おおっぴらには呑めないが、最高のアテが目の前に広がっている。何か作ってまったり没入しよう。

このキャンプグランド、1サイト20ドルはちょっと高いかなと思ったが、24Hの無料シャワー、弱いがWiFi、なんと言っても文句無しのロケーション。全然高くないな。2~3人用テントなら Love's の貸しシャワーよりも、お得だ。

モニュメントバレーのキャンプ飯


少し冷えてきたので豚バラのスープ と サーモンのロースト & ピスタチオ

ふかふかの赤土には普通のペグが効かないので、各サイトには 7、8個、ウェイト用の石が置いてある。​深く差したペグの上に乗せてもいいし、この石にガイロープを結んでもいい。たまに風が吹くのでこれは助かる。

このキャンプグランドにはテント用サイトが30あるが、今夜は7張りだけだった。

自分のテントと月に照らされたビュートの間には何もない。

深く腰掛け、ただ、空を見上げる。

本質的な贅沢を味わっているのがわかる。

モニュメントバレーのキャンプ写真。

 

Chill out

夜のモニュメントバレー。

 

0:20 ナバホの聖地に冬の星々が出揃ったので、もう寝マス。

追伸.  画をクリックするとモニターいっぱいに星が見えるかもしれません。

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